花びらを数える日々

チラシの裏、ときどき星の屑

美しい対比と沈黙の世界/「ファースト・マン」感想

2月8日に公開された「ファースト・マン」を観た。
とてもいい映画だった。とてもいい映画だったと誰かに話したくなったが、とてもいいという言葉だけではあまりにも足りなかったので、ここに書くことにする。

デイミアン・チャゼル監督の作り出すコントラスト

僕がファースト・マンを観るきっかけとなったのは、数年前に公開された「セッション」というデイミアン・チャゼル監督の映画だった。 レビューは賛否あるようだったが、僕にとっては素晴らしい映画だった。静と動、人間の表裏が際立った作品だった。 僕はデイミアン・チャゼル監督が描く対比が好きだ。少しやりすぎな感じもするけれど、コントラストが強いほど、見せたいものが強烈に伝わる。少なくとも、エンターテインメントとしては優れている、と思う。

ファースト・マンでは、宇宙という舞台のおかげもあって、光と闇、音の無い世界、生と死、行く人と待つ人、といった様々な対比が生まれていて、そのどれもが物語に重みを与えていた。
とはいえ、重みがあるのは当然で、これは本当にあった話なんだ。月面着陸という華々しい歴史の裏には、フィクションであったらよかったのに、と思えるような悲劇もあって、この映画そのものが栄光とその裏側の対比を描いているとも言える。

ジャネット役のクレア・フォイが素晴らしい

これは書いておきたい。演技が素晴らしかった。
僕は役者には疎くて、今回の映画でジャネット・アームストロング役を演じたクレア・フォイという女優さんのことも全く知らなかった。
しかし、今回の映画では、彼女の演技に度々胸を打たれた。

ジャネットは言ってしまえば一般人で、それはある意味で、映画の観客に一番近い登場人物だったのではないか、と思う。
僕は一般人だから、宇宙飛行士であるニールよりも彼女の方が感情移入しやすかったというのもある。
もし僕が彼女の立場だったなら、平気でいられるはずがない。夫が栄誉あるミッションに抜擢されたからといって、単純に喜べるわけがない。
想像する以上にずっと複雑であろうジャネットの葛藤が、声や表情や佇まいからありありと伝わってきて、ああもうどうすればいいんだと僕は泣いた。

人間として当然持っている弱さと、彼女の芯の強さがどちらも表れていて、とても魅力的だった。

その他所感

莫大な額の税金と、尊い人命までも失って、ようやく得た月面着陸という成果。
ニール・アームストロング船長が言った、人類にとっての「大きな飛躍」がどのようなものを指すのか、その真意はわからない。
でも、人類が月に行ったという事実は、半世紀経った今でも、きっと世界中の多くの人を勇気づけている。
困難に挑むとき、未知に臨むとき、こういう物語が背中を押してくれたりして、もしかしたら、そういう「夢を与える」とか「勇気付ける」とか、そういうことも含まれていたのかな、なんて。

静寂が大事に用いられている映画に感じたので、静かな時間・人の少ない上映回に行くことをおすすめ。

宇宙・月・ロケット好きなら迷わず見るべき。細かな描写までとても良かった。

本当はもっといい部分とかたくさんあるんだけれど語彙力と文章力がない。あとは映画見てください!