花びらを数える日々

チラシの裏、ときどき星の屑

隣のサボテンは青い

晴れた昼下がりの道を自転車で走っていて、ふと、視界の端に映ったサボテンの花に目が止まった。自転車から降り、近くに寄ってみると、やはり美しい光沢を持った花がそこにはあった。僕はサボテンの花が好きだ。

花を咲かせるというのは、いろいろな物事の比喩に用いられる。合格や成功など、良い意味に取られることが多い。だが、僕たちは社会人にもなると、花を咲かせる機会が極端に少なくなるように思う。目標は限りなく、高くて遠い。現状維持は衰退と同義だと教わる。常に、ずっと、高みを目指さなくては「普通」に生きていくことさえ困難だ。

サボテンの品種の一つに、金鯱というものがある。彼らは、強く立派な美しい棘を持っているから人気がある。人の社会にも、特別な成果を出さずとも、華やかで人気のある人がいる。花を咲かせることでしか誰かの目に止まることができない人たちは、そう言った存在を羨ましく思ったり、妬んだりする。でも実は、金鯱は花を咲かせるのに40年〜50年もの時間を要するそうだ。金鯱のような人からすれば、毎年や数年に一度でも花を咲かせることのできる人が羨ましいにちがいない。

花を咲かせることもできず、美しくもない僕らはどうすればいいか。きっと、それでも何か取り柄があるに決まっている。自分ではわからなくても、きっと。例えば、食べてみたら美味しいとか。

隣の芝は青く映るものだと、僕たちは知っている。比べるべきは、過去の自分だ。身長はもう伸びないけど、昨日よりも一歩でも成長して、いつかきっと、誰かを楽しませてやろう。