花びらを数える日々

チラシの裏、ときどき星の屑

週末前夜のネガティブ

電車の中、目の前の人が立ちながら船を漕いでいる。いや、吊革につかまったままくるくるしている。左前方には、扉の横に立つ人がいて、優先席の側面に寄りかかっている。コートのベルトが座席側にはみ出していて、席に座る壮年の男性が顔をしかめるのが目の端に映った。よくある光景だ。カナル型のイヤホン越しに、どこかから音漏れした音楽も聞こえてくる。

僕らはきっと、自分でも気づかないうちに誰かに迷惑をかけているのだろう。僕も知らないうちに誰かに迷惑をかけて、恨まれているかもしれない。
何をするにしてもそうだ。プールの中で水を掻き分けずに歩くことができないのと同じように、それがどんな動きあっても周囲に何かしらの影響を与える。大抵は良くない影響のように思える。
僕が今の事業を成功させたとしても、誰かは幸せになって、誰かは不幸になる。商品の役割と買う人が同じなら、僕が商品を売るということは、同時に誰かの商品が売れなくなるということだから。

こんなことを考えても仕方がない。それが自然なことなのだから。そんな風に割り切って考えてしまえばいいのだろうけれど、割り切ることが正しいのかはわからない。

誰もが幸せになる方法があればと願いつつ、結局は、自分が正しいと思うことをするしかない。
何が正しいかも、正しさが人を幸せにするかどうかさえも、今の僕にはわからない。わからないけど、わからないから、やっぱり自分のできることをするしかないのだろう。