食欲なく秋を味わう
雲ひとつない、穏やかな秋晴れの一日。
秋は柔らかくて甘い匂いがする。これが日差しの匂いなのか、街の匂いなのか、あるいはただの錯覚なのかはわからないけれど。今朝は金木犀とは違った甘さが空気に混ざっていて、お腹が膨れた。気がした。
日々の中で、気を抜くと、身の回りの理不尽に押しつぶされてしまいそうになる。そうならないために、すべては選択の結果だと、自分に言い聞かせている。
努力が報われないとしても、それはどこかで甘えた自分や、その環境に身を置くことを決めた自分の責任だ。そうやって考えれば、きっと、自分にとって不都合な事態も、他人も、受け入れられる。
ふと、映画の台詞を思い出す。「戦おう、ここが俺たちの世界だ。」そう、きっと僕らは死ぬまで戦い続けなくてはいけないんだ。理不尽や悪意や、自分自身の弱さと。
受け入れてみても、戦ってみても、やっぱり疲れるときがある。そんなとき、秋風の優しい甘さは胸を満たしてくれる。